企業経営で役に立つ用語集【経営学をわかりやすく解説】


経営戦略の体系と理論

経営戦略は大きく、企業強化、企業成長、企業競争を目的としたものに分類することができる。1960年代の経営戦略は主に企業強化を内容としたものであり、代表的な学説としてはチャンドラーやアンゾフによる所説がある。チャンドラーは、組織と戦略との関係を「組織は戦略に従う(Structure follows Strategy)」という命題で表現した。また、アンゾフは経営戦略の構成要素を明らかにするとともに、製品―市場マトリクスという重要な考え方を提唱した。

70年代には多角化企業にとって効率的な資源配分の方法を示したPPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)がBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)によって提唱された。これは企業成長の新たな方向を示すものとして注目を集めた。そして、80年代に登場したポーターによる競争戦略論は、5つの競争要因と3つの基本戦略を示すものであり、その後の企業経営の方向性を決定づけたといっても過言ではない。90年代以降は個々の企業が保有する経営資源と、その活用能力をめぐる考え方へと変化してきている。

(465文字)

経営戦略(全社戦略、事業戦略、機能別戦略)

経営戦略は、企業レベルの戦略である「全社戦略(企業戦略)」、事業レベルの戦略である「事業戦略」、職能レベルの戦略である「機能別戦略」に分類される。

「全社戦略」とは、企業全体の将来のあり方にかかわる戦略であり、主に事業分野の選択と事業間の資源展開のあり方を内容としている。

次に「事業戦略」とは、企業が実際に展開している事業や製品―市場分野において、いかに競争を優位に展開させるかということに焦点を当てた戦略であり、主に資源展開に関する方法と競争優位性の確保を内容としている。

また「機能別戦略」とは、生産、マーケティング、人事、財務、研究開発(R&D)などの各職能分野において、経営資源をいかに効率的に利用し、生産性を高めるかということに焦点を当てた戦略であり、そこでは資源展開とシナジーが重要な戦略構成要素とされる。

(357文字)

成長ベクトル(製品市場マトリクス)

アンゾフは、企業の成長戦略すなわち企業が展開する事業の方向性について製品と市場という2つの切り口から検討すべきであると主張し、そのためのツールとして成長ベクトル(製品市場マトリクス)を提唱した。成長ベクトルは縦軸に市場、横軸に製品をとり、既存と新規に区分し、戦略のパターンを市場浸透戦略、市場開拓戦略、製品開発戦略、多角化戦略の4つに分類する。

市場浸透戦略とは現在の市場で既存の製品・サービスの販売額やシェアを伸ばそうとする戦略である。具体的には、顧客の購入額や購入頻度を上げるために、販売促進の強化や低価格設定などのさまざまな政策が行われる。市場開拓戦略には地理的に市場を拡大するほかに、既存の製品・サービスに新たな用途を見出すことも含まれる。

製品開発戦略には新製品の開発だけではなく、製品のモデルチェンジや他の技術との新たな組み合わせなども含まれる。アンゾフ自身が最も研究に力を入れたのは多角化戦略であり、彼は多角化戦略をさらに、①水平的多角化、②垂直的多角化、③集中的多角化、④集成的多角化(コングロマリット的多角化)の4つに類型化した。

(472文字)

多角化戦略

成長ベクトルを提唱したアンゾフは、新規市場で新しい製品・サービスを提供していくことを多角化戦略とした。多角化戦略を実行する理由は、①さらなる成長を目指すこと、②経営リスクを分散させること、③投資コストを削減することである。

企業がさらなる成長を目指すためには、既存の製品―市場分野を対象にしているままでは限界があるため、新しい分野への進出が課題となり、これが多角化戦略を促す。また、企業が単一事業しか展開していない場合には、その事業が業績不振に陥った場合に、経営危機の可能性が高まる。そこで、複数の事業を持つことによって、1つの事業が業績不振に陥っても他の事業でカバーできるというリスクの分散効果が多角化戦略にはある。さらに、既存の経営資源を新事業でも使用し、投資コストを削減するという範囲の経済による効果もある。

多角化戦略は、既存事業とのシナジーが期待できる関連多角化と、新しい事業に着手する非関連多角化の2つがある。また、アンゾフは多角化戦略を、①水平的多角化、②垂直的多角化、③集中的多角化、④集成的多角化(コングロマリット的多角化)の4つに類型化した。

(479文字)

撤退戦略

撤退戦略とは、不採算事業や将来に見込みのない事業を売却したり、清算する戦略である。事業の売却により得られた資金を、有望事業に投資することは、より高い成長を目指していくための成長戦略の基盤にもなる。

PPMの関係から言えば、負け犬に位置づけられている製品ないし事業は撤退戦略を採用することが多い。

(146文字)

シナジー効果

シナジー効果とは、経営資源同士が有機的に結合することによって、双方の単純総和以上の結果(効果)が得られることである。企業経営においては、合併や提携、多角化などの場面でシナジー効果が問われることが多い。

アンゾフは多角化戦略によって、販売シナジー、生産シナジー、投資シナジー、経営管理シナジー(マネジメントシナジー)という4つのシナジーが発揮されるとしている。

販売シナジーとは、流通チャネルや物流施設、ブランドなどを共通利用することによって生じる相乗効果のことである。生産シナジーとは、原材料の一括購入、生産技術の転用などから生じる相乗効果のことである。投資シナジーとは、設備の共通利用や研究開発の成果を共有することによって生じる相乗効果のことである。経営管理シナジーとは、既存の知識や経営ノウハウを共通利用することによって生じる相乗効果である。

(371文字)

規模の経済と範囲の経済

規模の経済(Economy of Scale)とは、生産量が増えるに従って、単位当たりの生産コストが低下する経済的効果である。原材料などの変動費は、生産規模の拡大とともに増大するが、工場設備のような固定費は、生産規模の拡大にしたがって、製品に広く負担させることができるために、単位当たりの固定費は低下する。

範囲の経済(Economy of Scope)とは、複数の事業活動をそれぞれ別の企業が行うよりも、1つの企業で行った方が、個別企業で発生する費用の合計よりも少なく済む経済的効果である。範囲の経済が生じる要因は、企業内の未利用資源の活用にあり、経営資源を1つの事業だけでなく、他の事業と共通利用することによって生産コストが低下する。

規模の経済と範囲の経済を追求することによって、19世紀末から20世紀初頭のアメリカにおいて、ビッグビジネスが誕生した。

(373文字)

SWOT分析

SWOT分析とは、自社を取り巻く外部環境の機会と脅威を認識し、自社の強みと弱みという内部資源を正しく把握していく際に効果的な分析手法である。SWOTとは、強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)の頭文字をとった名称である。強みとは、他社との差別化がなされている経営資源であり、競争優位の源泉になる。弱みとは、他社に比べて劣っている経営資源である。強みと弱みの把握によって、自社の現状や能力を知ることができる。

機会とは、自社にとってチャンスとなる環境変化であり、脅威とは自社にとって注意しなければならない環境変化である。こうした機会はすべての企業にとって同じ条件であるので、自社にとっての機会とは「他社にはない強みを発揮できる舞台」のことを指す。

SWOT分析では、単に内部資源や経営環境を分析して、4つの要素を列挙するだけではなく、その結果に基づいて、戦略の方向性を見出していくことが課題となる。

(435文字)

経験効果

企業のコスト競争力を理解する上で、重要な考え方が2つある。1つは規模の経済であり、これは、生産量が増えるに従って、単位当たりの生産コストが低下する経済的効果である。もう1つが経験効果である。これは、累積生産量が増えるに従って、単位当たりの生産コストが低下する経済的効果のことである。この経験効果を経験曲線という概念を用い、実際の企業の事例を通じ、実証したのがアメリカを代表する経営コンサルティング会社であるBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)である。経験曲線とは、ある製品の生産を継続すれば、単位当たりのコストが下がり、このコストの低下をグラフ化したものである。BCGは、経験効果が働く理由として、生産労働者の技術の習熟度などを挙げている。また、BCGによれば、経験効果でコストが低下していくのは生産以外にも、販売、マーケティングなど、企業の様々な付加価値活動に及ぶと主張している。

 (396文字)

PPM

PPMとは、多角化企業がいかに効率的に資源配分を行っていくかという分析手法であり、BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)により提唱されたものである。PPMは、市場成長率と市場占有率(相対的マーケットシェア)の組み合わせから、各事業のポジショニングを明確にし、それに合った戦略を立てることを目的としている。

企業の製品ないし事業は「金のなる木」、「花形(スター)」、「問題児」、「負け犬」という4つのグループに区分される。「金のなる木」とは、市場占有率が高く、市場成長率が低いグループである。市場占有率が高いため、多くのキャッシュフローを企業にもたらし、他の事業の重要な資金源となる。「花形」とは、市場成長率も市場占有率も高いグループである。「問題児」とは、市場成長率は高いが、市場占有率が低いグループである。資金の要請量が大きく、収益力が低い事業であるが、将来の成長事業になる可能性を秘めている。「負け犬」とは、市場成長率も市場占有率も低いグループである。そのため、多くの企業が撤退戦略を採用する。PPMの成功例としては、金のなる木で得たキャッシュを問題児に投入し、花形にしていくモデルがある。以上のように、PPMは資金の集中と選択的投資の方法を示唆しているのである。

 (537文字)

競争戦略

競争戦略とは、同一業界にいる競合他社との差別化をはかることによって、競争優位性を獲得するための戦略であり、ポーターによって提示された概念である。ポーターは競争戦略論に産業組織論を援用し、企業に対して収益をもたらしうる業界の構造分析を行った。それによれば、①新規参入の脅威、②代替品の脅威、③買い手の交渉力、④売り手の交渉力、⑤既存企業間の敵対関係という5つの競争要因が業界における競争構造を決定するとした。この5つの競争要因を明らかにすることで、企業は最も収益性の高い業界を事業分野として選択することが可能となり、競合他社からの競争圧力やそれ以外の脅威に対処できるような戦略上の地位に自社をポジショニングすることが可能となる。

このような方法で業界内に自社を位置づけたなら、競合他社への対応方法としてポーターは、3つの基本戦略があると主張する。

第1の戦略は、競合他社よりも相対的に低コストで製品・サービスを提供することによって、競争優位性を獲得するコストリーダーシップ戦略である。コスト優位を確立するためには、先行的に大規模の投資を行うことが必要であり、コスト優位が機能する理由として、規模の経済や経験効果などが指摘される。

第2の戦略は、競合他社にはない独自性を追求することで新たな市場を創造する差別化戦略である。差別化の次元としては、製品の機能、品質、デザイン、ブランド、アフターサービスなど多くのものが考えられるが、こうした次元のどれかに差別化をはかることができれば、競争優位性を獲得することができる。コストリーダーシップ戦略は、市場シェアの拡大によって低コストの実現をはかるのに対し、差別化戦略は必ずしも市場シェアの拡大につながらず差別化を実現するためにはかなりの研究開発費がかかるため、低コストの実現が困難である。したがって、コストリーダーシップ戦略と差別化戦略は相反する側面を有しているといえる。

第3の戦略は、業界における市場を細分化し、自社の能力に適合した特定のセグメントのみに焦点を当て、そのセグメントで低コストまたは独自性を追求する集中戦略である。集中戦略は、特定の顧客層、特定の地域市場、特定の流通チャネルなどに経営資源を集中させ、特定のセグメントで限定的な競争優位性を獲得することを目的とする。つまり、集中戦略は、特定セグメントにおけるコストリーダーシップ戦略または差別化戦略ともいえる。

(1003文字)

参考文献:①経営学の基本(経営学検定試験公式テキスト)

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